KUROKO PROJECT

〜 嬬恋村郷土料理『くろこ』再生プロジェクト 〜

馬鈴薯の共同選抜
馬鈴薯の共同選抜 (写真で見る ふるさと嬬恋のあゆみより)

■ くろこ とは?

芋おろし器くろこ とは、じゃがいもからでんぷん(かたくり粉)をとった絞りかすを、凍結と発酵によってもう一度食材に加工した保存食品です。くろこの製法が行われ、現在も食されているのは全国で嬬恋村だけで、嬬恋村で生まれた純然たる郷土料理です。明治2年(1869)頃から作られていたと考えられています。


■ どうして、くろこ が嬬恋村で生まれたのか

馬鈴薯を積んだ牛車(田代)嬬恋村の現在の特産物といえばキャベツが有名ですが、田代の松本相秀さんが明治29年(1896)に記述した『いもの原由記』によると、天明期(1781〜1788)に入ってきたじゃがいもは、天保15年(1844)には松本家で50俵を生産し、当時田代村ではじゃがいもから取れるかたくり粉を特産物として現金収入の大きな柱にしていたことが記されています。凶作に虐げられた天明期に嬬恋村に入ってきたじゃがいもは冷涼気候に強く、救荒作物として重宝され、その後、長期にわたり主力作物として、嬬恋村の産業を支えてきました。あまり知られていませんが、キャベツが有名になるずっと前から、じゃがいも、馬鈴薯と言えば嬬恋村が本場なのです。

開拓の頃 そして『いもの原由記』には、“夫より明治二巳年不作にて、 粟 稗 蕎麦実法らさるに芋大に当り 当村□に通し 右巳年より芋志ほりかす一切捨ず喰事に用ひ候又は売候事に相成今は少しも捨る者なく食に用る事と相成候”とあります。決して豊かな土地とは言えなかった火山灰土の浅間野を開拓した先人達は、でんぷんを採取した後のじゃがいもの絞りかすをも食材として有効に利用しました。現在の私たち嬬恋村民は、このような先人による暮らしの知恵によって今に継続されてきたとも言えるでしょう。


■ くろこ の価値

馬鈴薯の播種風景一般的に、郷土色のある名物料理を郷土料理と言いますが、地方特産の食材で地方独自の調理法で作った、純然たる郷土料理は全国的にも稀なのだそうです。また、でんぷんを採取した絞りかすには、大量の食物繊維が残っています。これがくろこの主要成分ですので、美容健康食品として大変優れた食材です。しかも100%天然素材でつくる安全な食品、そして(じゃがいもの)育て方と(くろこの)作り方のレシピさえあれば、誰でも手軽に自分でつくり楽しむことができ、現代の「スローライフ・スローフード志向」にも応えてくれる、まさに現代社会の待望の食材なのです。


■ クロコプロジェクトに向けて

馬鈴薯の集荷現在、家庭でつくられているくろこの多くは、でんぷんをやや残した贅沢なものに変貌しています。かつて嬬恋村西部地域で日常的に作られていたくろこも、本来の製造法はもう村内でも数人のお年寄りしか知らないという状況です。私達は、『先人の暮らしと尊い歩みから生まれ引き継がれてきた文化遺産である“くろこ”を、再生保全するのは今しかない』と、立ち上がりました。私達は、くろこ加工技術を再生させ、近い将来、この待望の食材“くろこ”を、嬬恋村の特産物にまで発展させたいと考えています。たとえば、六合村の宿に泊まると小鉢に花まめがついてくるように、嬬恋村の宿に宿泊すると、必ず小鉢に入った郷土料理“くろこ”が出てくるようになり、この純然たる郷土料理“くろこ”の加工・卸売りが、伝統食品の特産物として、地場産業として、嬬恋村に定着することが、私達の願いです。世界に羽ばたけクロコ

嬬恋村で生まれ引き継がれてきた“くろこ”が、いよいよ時代のニーズに求められ、脚光を浴びる時代になったのです。優秀な企業がこの優れた食材に目をつけ商品化するのはそう先の事ではないでしょうが、できればその前に、私たち地元の者が先人のわざとレシピをしっかりと引き継いで、誇りを持って“くろこ”を世に広めて行こうではありませんか!「SUSHI」や「TOFU」が世界語であるように、「KUROKO」が世界語になることも夢ではありません。


■ くろこ の食べ方

クロコ料理の写真乾燥した保存食のクロコを、水に浸して再びペースト状に戻し、ネギと味噌などを加えて捏ねて餅の様に形を作ります。かつては、これを焙烙(ほうろく)で表面を焼き、囲炉裏の灰の中で焼き上げたようですが、現在は油で揚げています。しゃきしゃきとした歯ごたえが良く、ネギ、味噌との相性は抜群です。温かいうちに召し上がることをお奨めします。他にも、私達は現代風にアレンジしていただけることも望んでいます。嬬恋村には多くのレストラン、宿泊事業所があります。そのシェフの方々、事業所主の方々と共に、この食材を研究・開発していけることを楽しみにしています。


◇◆ クロコプロジェクトこれまでの歩み ◆◇

2005年頃〜 土屋(茂)、木村がクロコプロジェクト構想の検討に入る。
2006年11月21日 理事会にて2007年度の事業計画でクロコプロジェクトを始動する案が出される。
2007年 4月14日 総会にて会員にプロジェクト告知。現代風クロコの試食を行う(土屋けさ代さん作)。
2007年 4月24日 嬬恋村政策推進課佐藤重雄様のお計らいにより、佐藤様、土屋(茂)、住田、小林、木村の5名で独立行政法人種苗管理センター嬬恋農場を訪ね、馬鈴薯の基礎知識・歴史についてや、馬鈴薯原原種農場から現在の種苗管理センターまでの変遷についてなどを、米村信農場長、三澤孝調査役からお話を伺う。さらに施設群を三澤様のご案内により見学させていただく。
独立行政法人 種苗管理センター嬬恋農場を訪ねる
2007年 5月14日 土屋(茂)の畑にて、じゃがいも三種の植え付けを行う。
参加者:土屋(茂)、住田、小林、大島、黒岩(初)、土屋(澄)、黒岩(勇)、斉藤、伊藤、木村
じゃがいも三種の植え付け
2007年 6月28日 土屋(茂)の畑にて、草むしりと作切り作業を行う。
参加者:土屋(茂)、大島、黒岩(初)、土田、伊藤、木村
草むしりと作切り
2007年 6月28日 クロコ作りの達人を訪ねる。
1.田代の達人・海野西五郎さん
2.大前の達人・黒岩時子さん
3.上毛新聞記事(2007.07.01)
2007年 9月 6日 黒岩時子さんへの下々取材(NHK前橋支局)
2007年 9月26日 芋掘りと下取材(NHK)準備
上毛新聞記事(2007.10.01)
2007年10月 5日 NHKテレビ総合 17:15〜夕時ネット出演
2007年11月 5日 種じゃがいもを掘る&読売新聞取材
読売新聞記事(2007.11.07)
2007年11月21日 芋すりおろし作業
2008年 3月19日 くろこの栄養価、食物繊維成分分析
(明治大学リバティーアカデミー事業、明治大学農学部早田研究室調べ)
2008年 4月7日
〜4月24日
食材『クロコ』完成、クロコプロジェクト結果報告

2007年じゃがいも成長の様子


☆★ 土屋茂次(前会長)声明文 クロコプロジェクト開始にあたって ★☆

 
◎参考文献、引用資料