「くろこ」の栄養価、食物繊維成分分析

(明治大学リバティーアカデミーにより実施 http://www.meiji.ac.jp/manabigp/)

平成19年度 文部科学省 「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」

嬬恋プロジェクト … 伝統技術指導人材の育成プロジェクト

(受講生が作った)嬬恋アグリカレッジ教本より

「くろこ」に含まれる不溶性食物繊維および不溶性繊維画分の測定


【目的】

 じゃがいもからでんぷん(かたくり粉)をとった絞りかすを凍結と発酵によってもう一度食材に加工した保存食品である「くろこ」の栄養価を探るため、食物繊維の分析とその評価を行った。

【材料および方法】

  1. 「くろこ」1gにタンパク質を除去するために、trypsin 溶液(1.0Mリン酸緩衝液30ml、pH8.0 に2.5%となるようにtrypsin を溶解)で37℃で18時間反応後、濾過を行った。
  2. 残渣(精製不溶性繊維分画)に不溶ペクチンを除去するために0.5%シュウ酸アンモニウム100mlを添加し、85℃で2時間静置後、濾過を行った。
  3. 残渣に5%KOH 100mlを添加し、一晩放置後、濾過し、濾液と残渣に分画した。残渣は、デシケータで乾燥し秤量した。(セルロース+リグニン画分)
  4. 濾液は、酢酸を滴下しながらpH4〜5に合わせ、遠心分離し、沈殿物と上清にわけ、上清を4倍量のEtOHを添加し濾過を行った。この残渣と、一回目の沈殿物を混合し、デシケータで乾燥させ秤量した。(ヘミセルロース画分)
  5. 残渣(セルロース+リグニン画分)に、17.5%NaOH 50mlを添加し、可溶部と不溶部に分け、濾過を行った。不溶部(残渣)にさらに72%硫酸10mlを添加し溶解し、不溶部をデシケータ乾燥し、秤量した。(リグニン画分)セルロース含量は、セルロース+リグニン画分からリグニン画分を引き、算出した。

【結果】

 「くろこ」に含まれる食物繊維は、総重量の95%と大半が精製不溶性繊維であり、アルコール不溶性タンパク質は3%、その他が2%であった。ジャガイモに含まれる水溶性繊維並びに可溶性ペクチンは「くろこ」には検出されず、デンプンを取り出す課程でほとんど消失したものと推定される。

 次に、精製不溶性繊維中に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンおよび不溶ペクチンの含有量を定量したが、それぞれの含有量は11%、76%、3%および6%となり、「くろこ」の食物繊維の多くがヘミセルロースとセルロースの2成分であることが判明した。

 このことから、「くろこ」の機能性として大腸がんの予防効果、コレステロールや血圧の上昇抑制効果、さらに排便作用および整腸作用などの効果が期待される。

 また、不溶性ペクチンの含有量は6%と少量であるが、その効果は整腸作用、解毒作用、胆汁酸の再吸収阻害やミネラルの吸着、膵臓分泌亢進などの広範囲に及ぶとされ、「くろこ」の機能性の高さが窺われる。リグニンは3%と微量であるが、リグニンには胆汁酸の吸着作用があり、コレステロール代謝に影響を与えるとされている。

 さらに坑腫瘍作用、マクロファージ活性化作用が大きく、他の食物繊維と同様に便性改善に有効であることが推定される。

 以上まとめると、「くろこ」の機能性として、その大半が精製不溶性繊維であり、その多くがヘミセルロースであることから、大腸がん予防、コレステロールや血圧の上昇抑制効果および排便及び整腸作用などが特に期待されるとともに、セルロースや不溶性ペクチンなどによる成長作用も大きいと考えられる。

〔明治大学農学部 早田研究室調べ〕


--- 引用資料 ---

平成19年度「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」(文部科学省)
「広域連携による地方活性化のための潜在的な社会参加ニーズ対応就労促進プログラム」
Project.2 伝統技術指導人材の育成
連携先 群馬県嬬恋村
コーディネーター 水野勝之(みずのかつし)明治大学商学部教授
発行日 2008年3月19日
委託 文部科学省
編集発行 明治大学リバティーアカデミー
〒101-9301 東京都千代田区神田駿河台1-1 TEL03-3296-4539
印刷 株式会社サンヨー

クロコプロジェクトの歩みへ

嬬恋村郷土料理『くろこ』再生プロジェクトTOPへ

嬬恋インタープリター会TOPへ