湯の丸山レンゲツツジ保護増殖事業への協力

湯の丸高原レンゲツツジ保全対策協議会と嬬恋村では、遷移により森林化が進み衰退が見られる国指定天然記念物「湯の丸レンゲツツジ群落」の保護増殖事業を行なっています。住民、ボランティアグループ、村内企業、子ども達、行政一体となって活動していますが、特に教育委員会が主体となり地元の小中学校、嬬恋高校に対して呼びかけを行ない、自然観察等の時間を設けていることから、嬬恋村インタープリター会ではこの事業を地元の子ども達、学生達に対する環境教育の場の契機としてとらえ、本事業へ参加、協力をしています。

■湯の丸レンゲツツジ群落の沿革

 1.湯の丸牧場の開設と変遷

湯の丸牧場は、長野県小県郡東部町の牧野組合が明治37年に開設しました。牧場の所有者は嬬恋村鹿沢温泉の紅葉館主小林亀蔵氏でした。当時は畜産業が盛んで湯の丸山が牧場に適していたことから年間300頭(牛・馬・綿羊)もの放牧頭数がありました。現在の放牧頭数は年間30頭(牛)に満たない状況です。この放牧頭数の減少は牛肉の輸入自由化による畜産業の低迷が大きな要因と考えられます。

 2.国指定天然記念物湯の丸レンゲツツジ群落の成立

湯の丸牧場の開設により低木樹の新芽や草は家畜の飼料となりやがて草原と化していきましたが、レンゲツツジは牛馬の忌避植物であったため食べられず群落が形成されていきました。そして昭和31年5月15日には国指定天然記念物の指定がなされました。天然記念物指定地域は海抜1,585mから湯の丸山頂の2,101mに及び、面積は272haもあります。

 3.湯の丸レンゲツツジ群落の衰退

しかし昭和50年代頃から放牧頭数の減少によりカラマツ等の大木の生長が目立ち始めます。これには牛馬の採餌行動の他、踏みつけ圧も影響していると考えられます。日陰になったレンゲツツジは花芽をつける力を失っていきました。レンゲツツジは陽光の十分にあたる草地で、地上空間、地下空間に他の植物と競争の少ないところで、土壌も貧栄養の酸性土壌を好みます。そのため草地の森林化や林床の笹地化、土壌の富栄養化による高茎草本の繁茂はレンゲツツジにとって致命的になることが多いのです。

 4.湯の丸レンゲツツジの保護増殖事業

レンゲツツジは日本の固有種であり、国内最大級の群落である湯の丸レンゲツツジは地球レベルにおいて後世の人類のために大切に維持管理する必要があります。また、レンゲツツジは昭和26年群馬県花となっており、郷土のレンゲツツジが天然群落であるという意味においても大変に価値のあるものです。そして『放牧によるレンゲツツジ群落の形成維持』は長い日本人の生活文化史の中で育まれた一つの文化遺産であり、この植生状態、景観を失うということは極端にいえば文化を一つ失う事を意味します。採算の合わない大規模な放牧を再度行う事は現実的でないことから、私たち有志が牛馬の代わりとなって、牛馬の餌となるはずの植物を下刈り、除伐し、未来世代にこの景観を引き継いでいく必要があります。

≪湯の丸レンゲツツジ群落保護増殖ボランティア活動(2008年度)≫

【趣 旨】 住民・ボランティアグループ・村内企業・子供たち・行政が一体となって本村を代表する「湯の丸レンゲツツジ群落」の自然生態系や広く環境保全に関する保全活動を体験することで「心と文化をはぐくむ村づくり」を実践し、環境教育の機会の整備・普及を目指してゆく。

【主 催】 湯の丸レンゲツツジ保存会・嬬恋村

第1回  6月14日(土)  レンゲツツジ保全のボランティア活動と自然観察
□第2回  9月 6日(土)  レンゲツツジ保全のボランティア活動と自然観察
□第3回 10月7日(火)  レンゲツツジ保全のボランティア活動(チェンソー等使用)

■時 間      9:00〜15:30まで
■持ち物     各人のお弁当、水筒、軍手、雨具、下刈り道具
■問い合わせ先 嬬恋村教育委員会嬬恋郷土資料館
TEL0279-97-3405(ファックスも同じ)

 ☆ 平成20年度事業要綱(doc.65kb)

※本事業については遷移を進ませ森林へと誘導したほうが良いという考え方もあり、その考え方を否定するものではありません。会員であっても参加は個人の自由です。