ミヤマモンキチョウ

和名
ミヤマモンキチョウ
分類
シロチョウ科モンキチョウ属
学名
Colias palaeno (Linnaeus)
分布
森林限界付近の高山。北アルプス、浅間山系に分布。
食草
食樹
クロマメノキ(ツツジ科)

■生態について

蝶の発生から蛹化までの時期は、ミヤマシロチョウと大差ありません。7月上旬からオスが早く羽化をします。色彩は地色が黄色で外縁に黒い帯模様があり、翅縁・触角・脚がピンク色なのがこの蝶の特徴とされています。メスの地色は白色で、裏側が薄黄色で、一見白い蝶に見えます。大きさは前翅長24〜27mm位でシロチョウより小さく、飛び方は3種中最も速く敏捷性で一直線にスゥーっと飛び、静止してもなかなか近づけません。また天候の変化に敏感で、曇りや強風の日にはほとんど活動しないほど個体数の確認しにくい蝶です。

◎左の赤枠内を拡大すると…卵が見つかりました。

産卵は食草−クロマメノキ−の葉の表面中央部に1個(まれに2個)を産み付け、一つの株で数箇所産んだ後、また次の株へと飛び去り、同様に1個ずつ産みつける行動の繰り返しをします。卵は薄黄色で長さ1.4mmです。孵化した幼虫は3齢まで育ち、植樹の葉の上に静止したまま落葉して雪の下で越冬する。翌春雪解けと共に生長を開始し、4齢で蛹化します。青虫の幼虫は食餌以外は葉の中央に沿って体を伸ばして休んでいる場合が多く見つけにくいのですが、葉脈を残して葉を食べるので網状になった葉の食痕から見つける事ができます。

生活はミヤマシロチョウとは対照的で、巣はつくらず終生単独で生活をします。生息範囲はミヤマシロチョウより広範囲にわたります。

◎ミヤマモンキチョウとモンキチョウの違い
ミヤマモンキチョウ ♀
ミヤマモンキチョウ ♂
モンキチョウ ♀
モンキチョウ ♂

■インタープリターション

嬬恋村の浅間山・四阿山・白根山などの周辺に産するものと、北アルプスに分布するものはそれぞれ亜種として別の学名を持っています。1,800m以上の稜線を軽やかに飛び、平地に住むモンキチョウよりもひと回り小さく、なによりも翅の縁を彩るピンクのフリルがかわいらしい。登山の疲れも忘れさせてくれます。

原生の自然が保たれている高山では、高山蝶は平地の蝶たちよりもむしろ生息の危機は少ないはずです。酸性雨?登山者の増加?…。実は、ミヤマモンキチョウの食樹であるクロマメノキはブルーベリーの仲間で、秋になる実が大変美味しく、「アサマブドウ」「シラネブドウ」という名で一時乱獲されていた経過があります。この影響は、否めないものがあります。持続可能な範囲内でならと言いたいところですが、生育場所の多くが国立公園内であるだけに、クロマメノキの採取はかつての地域食文化として持続にとどめ、商用を目的とする採取は禁じられるべきでしょう。

 
クロマメノキの花
クロマメノキの実

幼虫の採食の仕方
ピンク色の濃い個体


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