ベニヒカゲ

和名
ベニヒカゲ
分類
ジャノメチョウ科ベニヒカゲ属
学名
Erebia niphonica (Janson)
分布
亜高山帯から高山にかけての草地。本州中部地方以北。
食草
食樹
イワノガリヤス(イネ科)、ヒメカンスゲ(カヤツリグサ科)など

■生態について

本種の発生は他の2種よりも1ヶ月遅い8月上旬からで、最盛期は8月中旬から下旬です。発生時期も長く、9月中旬頃にも多くの蝶が見られます。最盛期には1日のパトロール中数百等もの個体が確認できます。大きさは前翅長17〜27mmと小型です。オスの地色は黒く眼状紋の周囲に橙色の帯があり、メスの地色はこげ茶色で眼状紋の中央に白点があり、橙色の帯の巾がオスよりも広く白色の縁毛が目立ちます。飛び方は低空で穏やかです。吸蜜はアザミやマツムシソウなどに集まって行い、ときには獣糞にも集まります。産卵はビール樽型の卵を食草(イワノガリヤス・ヒメカンスゲ等)以外の草の根本近くに1個づつ産みつけます。生息範囲が広く個体数は多いのですが、卵や幼虫はほとんど見つかりません。

■インタープリターション

高山のアザミやマツムシソウに、何頭もが寄り集まっているシーンにもよく出会う身近な高山蝶です。黒地に赤の紋を躍らせてお花畑を飛び交い、地味な色だがジャノメチョウ科特有の暗いイメージのない蝶です。人間にもよくなつき、リュックはおろか手や顔面にも汗をなめにとまってくる愛嬌者です。

以前、浅間山麓国際自然学校の野外パーティーの席にベニヒカゲがやってきて料理の上に舞い降りました。ハエやアブにとまられたのなら追い払ってしまうのですが、相手は自分が保護活動している高山蝶。その時は「高山蝶まで、祝福にやってきましたね。」なんて余裕の台詞を放っていましたが、帰ってからよく考えるとその前に獣糞にとまっていた可能性もあるんですよね…。天然記念物としての地位、8月にやって来る太陽の使いの様な色合い…なんだかずいぶん得をしている蝶のように思うのです。



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