ミヤマシロチョウ

和名
ミヤマシロチョウ
分類
シロチョウ科ミヤマシロチョウ属
学名
Aporia Hippia japonica Matsumura
分布
亜高山帯に局所的に分布。南アルプス、中央高原、浅間山周辺。
食草
食樹
ヒロハヘビノボラズ、メギ。(メギ科)

■生態について

求愛中(拒絶中)

蝶(成虫)の発生は7月上旬から8月2週頃までで、7月3週頃が最盛期です。色彩は地色が白く翅脈が黒。オスはメスより鱗粉の発達が強くメスより1週間ぐらい早く羽化します。大きさは前翅長30〜40mmくらいでオスよりメスの方が大きい。飛び方は滑空型で木の葉がひらひら舞うのに似た雅な飛び方をします。ハクサンフウロやアザミを好んで吸蜜し、吸水は湿地や路上でもします。

産卵中

産卵は7月末頃から見られます。産卵場所は食草−メギ科−の新芽を好み、葉の裏面に立体状に100〜200個もの卵を産み付けます。卵の形は弾丸型、高さ1.2mm位で黄色、縦皺があります。メスは産卵後次第に鱗粉が衰退して翅が半透明になり死んでしまいます。蝶になってから7日から10日くらいの寿命だといわれています。

羽化は早いものは8月10日頃には見られます。幼-虫は体長約2mmにも満たない毛虫で、孵化後は共同で巣をつくり翌年6月上旬(終齢期)まで集団生活をします。巣は簡単なものからだんだん形を整えて9月中旬頃には越冬に耐えられるような完全な巣に仕上げます。このときの幼虫の越冬齢は普通3齢。入り口も完全にふさがれて幼虫の姿も見られなくなります。

幼虫

翌年5年末に再び幼虫が活動を始めます。食欲が旺盛で食樹は枯れ草のようになります。摂食は越冬前は葉の裏面を網状に食べ、越冬後は葉を全部食べます。

6月10日頃から、終齢(5齢)をすぎたものが蛹化する場所を求めて集団から別れて単独行動をとり、巣の近くの枝等で蛹になります。

■インタープリターション

ミヤマシロチョウは国外では、朝鮮半島北部、アムール、ウスリー、中国北東部、同西部、チベットに存在します。ふるさとは中国西部とみられており、約150万年前に始まった氷河期によって、移動性のあるミヤマシロチョウは、寒期(氷河期)に山を降り、暖期(間氷期)に山を登るという行動を繰り返しながら、やがて朝鮮半島へたどりつきます。そして大陸と日本が繋がった激しい寒波の際に朝鮮半島を南下して日本本州に避難しますが、一部のものが帰るべき道を間違えて中部地方の山岳地帯を登ってしまったのでしょう。その結果が、日本、中国東北、朝鮮北部との遠隔分布を引きおこしたと思われます。

ミヤマシロチョウは人が近寄ってもあまり逃げません。これが捕まえやすく捕獲にあう要素の一つですが、氷河時代の以前から食草を変えず、生活スタイルも変えずにのんびりマイペースで生きてきた現われであるように思うのです。

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