2007年 6月28日(2) 田代の達人、海野西五郎さんを訪ねる
参加者:上毛新聞社記者・吉田様、土屋会長、土田、伊藤、木村
聞くところによると、田代に昔ながらのクロコ製法を今でも続けている方がいるという。先日、そのクロコを200名の中学生団体に提供したところ、取り合いになるほどの人気となり、同校のアンケート結果では林間学校10日間で食べた物のうち、最も美味しかったものはクロコだったとのこと。そのクロコ作りの名人・海野に西五郎さんが取材に応じてくださいました。
村や県を越えて国と付き合っている海野西五郎さん(70才)とは果たしてどのような人物だろうか?と思いましたが、会って見ると、なんともやさしい表情の、土の匂いがいっぱいする、嬬恋ライフと農業を心から愛する嬬恋人でした。お会いして思わずホッとするようなお方でした。
海野さんはたくさんのお話をしてくださいました。その一部、書きとめることができた事を明記します。≪クロコのこと≫
- 科学の力ではクロコはとれない。ミキサーではダメ。手でつぶさなくてはダメ。昔は水車でいもをついた。
- シロコ(でんぷん)を取る際に、四層に分かれる。下から土、シロコ、中間のクロコ、そして滓。この中間のクロコはでんぷんが混じっていて、子供の頃の主食だった。一番上の滓が、現在注目されているクロコ。どうにもならない滓団子がクロコ。
- クロコは凍結と発酵によってできる。ムシロで巻いたほうが発酵がよい。
- クロコは、乾燥させて蓋付きの一斗缶の中に保存している。
- クロコは昔は豚のラードで揚げた。小麦粉を入れてもおいしい。
- ネギは赤ネギが美味い。(軸が赤いネギ)
- 中間のクロコ+蕎麦の粉を水で溶いて焼き、蕎麦せんべいをつくり、いくさのすり味噌(いくさ+味噌+(砂糖))につけて食べる方法もある。
- いくさは虫が入るので、一升瓶の中に入れて保存している。油の匂いが良い。近所の方々がいくさを毎年持ってきてくれる。
- つんぼ焼きと言って、中間のクロコを取ってそのまま焼き、焼きあがった表面から食べる食べ方があった。
- クレープ風にして、ツナマヨネーズといくさを巻いて食べると現代風なのでは。(海野吉則専務)
≪じゃがいものこと、農業のこと≫
- 昔の嬬恋は米もとれない土地であった。開拓時におけるいもの役割は非常に大きかった。
- 1,000mを越えないと美味しいいもは取れない。
- 農業は作物から作ろうとしてはダメだ。作物から作ろうとするから、農薬だらけの野菜ができ上がる。昔は10アールに2〜3たいで良かった。今は7〜8たいになっている。土がおかしくなってしまっている。人のお腹の中に沢山の微生物がいて食物を分解・発酵してくれているように、土の中にもたくさんの微生物がいなくては本来の土壌の働きはできない。
- 嬬恋はこれだけキャベツを連作していて連作障害が起きないのは、冬に地面が凍結するから。高冷地は農業には都合が良い。嬬恋は気候にも助けられている。
- 黒豆、茶豆にも取り組んでいる。黒豆の味噌、納豆は最高に美味い。
上毛新聞の吉田さんも、書ききれないほどの情報量にさぞ困ったことでしょう。
![]()
![]()
話が一段落したところで、海野さんがおもむろにフライパンを取り出し、マーガリンを溶きはじめました。おやおや、何をなさるのでしょうか?手を伸ばした先には乾燥したとうきびが!ははーん、おやつの時間ですね?
![]()
![]()
乾燥とうきびをフライパンの上に置いていき、そこにすかさずざるで蓋をします。おお、これはアイデアだ!ポップコーンが弾けても周りに飛び散りません。
![]()
![]()
見る見るうちにポップコーンができあがって行きます。この弾ける音も久しぶりに聞くと楽しいものです。大体全部弾けたらざるをひっくり返してさあ召し上がれ。私たちの目は、エンターテイメント性に優れた乾燥とうきびへと熱く注がれていました…。
![]()
![]()
早速、海野吉則専務(息子さん)にこの乾燥とうきびを購入できるか聞いてみました。おや?専務さんはどことなく藤井フミヤに似ているような気が…。しかし、息子さんにしっかり農の心が引き継がれているなあと感心しました。専務さんは、手作りのカステラもご馳走してくださいました。
![]()
![]()
最後に、海野さんの畑を少し見させていただきました。土を良し知っている上、さまざまな取り組みをしていらっしゃるので、海野さんが話すことは全て勉強になります。作(畝)の間にあるのは雑草ではなく、マルチムギです。
秋まき性のムギは、低温感応性が鈍感で、冬の寒さにあうことで穂をつくり始める。そのため、秋まきムギを春にまくと、十分な低温にあわないため、穂の出ない青いままのムギとなる。この性質を利用して、カボチャ、スイカなどウリ科の地這栽培などで、ウネ間に春播きする。すると、育ったムギは雑草抑制や泥ハネ防止といった、マルチのような役をはたしてくれる。伸びても約30cm。これがマルチムギ。
〜 出典:ルーラル電子図書館 〜
今年は、海野さんのクロコづくり作業を手伝いながら勉強させていただくことになりました。召集の日が楽しみです。
![]()
![]()
2007年6月28日(1)草むしりと作切り
2007年6月28日(3)黒岩時子さんを訪ねる
この日の上毛新聞記事(2007.07.01)