嬬恋村郷土料理『くろこ』再生プロジェクト 開始にあたって



 元嬬恋村郷土資料館長の松島榮治先生が、平成9年(1997)12月号の広報つまごい「嬬恋村の自然と文化」シリーズで、『郷土料理“クロコ”』という記事を掲載なさいました。それを読んだ時私は、幼い頃、母が作ってくれた味噌と長ネギの入ったあの黒い食べ物…遠い記憶がよみがえってきました。「あのクロコが嬬恋村で生まれた純然な伝統的郷土料理で、全国的にも稀なものだったのか!」と驚いたのを覚えています。

 郷土料理“クロコ”の再生については、共に嬬恋村でのグリーン・ツーリズムを推進している木村理事などと構想検討はしていたものの、どのように進めていくべきか、また会内で賛同者を得られるのだろうか、と躊躇してしまっていました。ところが、それは要らぬ心配でした。理事会でクロコの話をしてみたところ、出席者全員が賛同と理解を示してくれました。よっていよいよ今年から、嬬恋村郷土料理『くろこ』再生プロジェクト(略してクロコプロジェクト)を開始いたします。

 先日の4月の総会では、大前の土屋けさ代さんが趣旨に賛同してくださり、試食用としてたくさんのクロコ料理を作ってくださいました。評判どおりとても美味しいクロコで、会員みんな喜んでいましたが、私を含め幾人かの嬬恋で生まれ育った会員達は、子供の頃食べたあのクロコの味とは少し違うことを知っていました。現在、嬬恋村の一般家庭で作られているクロコは、栄養価の高く旨味のあるでんぷんをやや残したままの製法へと変わってきているのです。贅沢、というか豊かになったということですので、これはこれで良い事なのですが、できれば、あの素朴な味わいをもう一度食べてみたい。そして、本来の伝統製法を残しておくことは、後世の方々が嬬恋村の先人の暮らしと歩みを理解することであり、嬬恋村における人と自然、文化のかかわりをインタープリテーションしていく当会の役割であると思っています。

 さらに付け加えれば、クロコは食物繊維が多くヘルシーな食材であり、安全なスローフード、しかも保存の効く食料です。まさに現在社会に求められ、脚光を浴びるべき待望の食材なのです。

 もう、村内でもかつての伝統的製法を続けられている方はそう多くはいません。私の知る限りではほんの数人という状況です。嬬恋村の文化遺産ともいえるこのクロコを再生保全するのは今しかありません。誇るべき先人の知恵から生まれ、嬬恋村の風土に根ざした郷土料理“クロコ”を、私達と共に再生して行こうではありませんか。ぜひ趣旨に賛同し、共にプロジェクトに関わっていただければ幸甚に存じます。

平成19年6月15日

(平成20年4月より顧問)

クロコプロジェクト声明文(PDFファイル 111kb)





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