草軽電鉄廃線跡を歩く(その2)

‡--‡--‡--‡--‡--‡--‡--‡
草軽電鉄の雄姿
今回は長野県側の林道を中心に歩いてみよう.
草軽電鉄の線路はナローと呼ばれる軽便規格であった.軌間は762ミリ.路盤の幅は架線柱のスペースを含めても3メートルに満たない.一方,現在の林道は自動車の通行を考慮しているので,幅員は4.5メートル以上のものが多い.したがって,路盤を道路に転換したあと,何度か拡幅工事が行われ,元の路盤の位置を特定することが難しい.
しかし,道路をよく観察すると,急カーブの前後に設けられた緩和曲線に鉄道ならではの曲がり具合を感じとることができるし,急勾配を避けるため窪地の中に盛土施工した直線の築堤など,一般道路との違いをはっきりと認識できる.
草軽時代の遺構として,石積みの土留擁壁,橋台,橋脚が部分的に残っている.これら大正初期建造物の中には,現在も進められている林道の拡幅整備や災害復旧工事に伴い,やがて消滅するおそれがなくもない.

‡--‡--‡--‡--‡--‡--‡--‡

主 催 嬬恋村インタープリター会
日 時 2009年6月13日(土)
集 合 国境平 スノーパーク付近 9.00
解 散 国境平 スノーパーク付近 15.00
コース予定と主な見どころ 国境平駅〜白糸林道・信濃路自然歩道(竜返しの滝)〜小瀬温泉〜長倉林道(柳橋橋梁・長日向駅)〜国境平駅
参加費 一般の方、会員とも1000円(保険代を含む) 但し,当会団体保険加入済みの方は500円
持ち物 弁当,飲み物,雨具,帽子,手袋,その他
  *道のない薮の中を歩くので,丈夫な長袖長ズボンの服装で
申込方法 Eメールまたは電話にて、1)お名前、2)生年月日、3)住所、4)連絡先電話番号、5)本会団体保険加入の有無 をお知らせ下さい.
申込窓口 宮川富士夫 Eメールはこちら
●IP電話 050-1040-3092  ●携帯電話 080-3479-5586
申込〆切 2009年6月9日(火)
草軽電鉄廃線跡を歩く(全3回)のお誘いチラシはこちら(rtf文書)


草軽電鉄廃線跡を歩く(その2) 実施報告書


白糸林道で植物観察、昆虫観察




信濃路自然歩道は森林浴に最適




柳川橋梁跡。高さがあって迫力がある。




橋脚がカーブしている。ドミノのカーブの様である。

 草軽電鉄の国境平駅,架空列車「インタープリター2号」の発車を待つ乗客の賑やかな会話が飛び交う.チョウセンゴミシとか何とか聞こえた.また珍しい植物を見つけたのだろう.博識者が揃っている当会おなじみの風景だ.

 この頃,駅長はひとりで気をもんでいた.定刻間近というのに,人数は指定券発行枚数(16人)の半分だ.ケータイで連絡が取れ,原因は直ぐ判った.集合場所を取り違えていたのである.50年前にタイムスリップして,空想の世界に浸ろうとするとき,スノーパークは不似合いで紛らわしい存在だった.

 新緑の白糸林道は,あちこちからハルゼミの合唱が聞こえる.車道を分つと,シダ類や倒木,垂れ下がったツル植物の間を縫うように行進して,白糸の滝から延びる信濃路自然歩道に合流.ここからは整備された快適なコースだ.ハルニレの大木,その他珍しい植物を見つけるたびに,歩を休め会員乗客の特別解説に聴き入る.

 竜返の滝を見て,小瀬温泉近くの軽井沢レクの森で昼食休憩.草軽電鉄の小瀬温泉駅はここから急坂を登って,1キロ以上も歩いたところにある.映画「山鳩」のロケ地で,森繁が駅長.映画の中の駅名「からまつ沢」が現在バス停に残っているが,本日のダイヤにはない.

 午後,軽井沢林道分岐点に到着.いよいよ廃線跡の旅が始まる.

 先ず,柳川橋梁跡.絵葉書にもなった有名な場所だ.乗客M氏持参の本には,1919(大正8)年の輸入蒸機牽引列車が通過中の写真が載っている.目の前にある石積み橋脚は90年間風雪に耐えて立っていたのだ.鉄道ファンならきっと,胸の中が熱くなったことだろう.乗客Y氏持参の古い5万図では,小瀬方面から渓谷沿いに林用手押し軌道が伸び,この鉄橋の下を通っている.長倉山林道の前身だ.それにしても,この列車には熱心な乗客が多くて感服する.

 続いて曲線の橋梁跡.U字線型で狭い渓谷を渡るのだが,両岸の陸地だけでは曲がりきれず,橋梁も湾曲している.既に橋桁は撤去され,石積みの橋脚しか残っていないが,その配置具合からカーブの様子が読み取れる.

 長い道のりで,乗客に疲れが見え,グループが前後に離れてしまった.一本道で迷う心配はない.先頭組には「この先の川を渡るところで待っていて下さい」と自由行動をお願いする.真新しいコンクリート製暗渠に改修された約束の場所に到着すると,待っていた乗客の方から崩れかけた橋台の存在を教えて頂く.何故そこで待つように云ったのか,すっかり車掌(小生)の心理を見抜かれてしまっていた.


2009年6月20日   文責 宮川富士夫
写真提供 木村道紘





インタープリター・木村道紘の日記より


  

今日は草軽電鉄廃線跡を歩くイベント。宮川さんが企画してくださった。このイベントは今年、シリーズで3回の開催を予定していて、今日は2回目。楽しみにしていたのに1回目は突然の下痢で参加できなかった。信じられん。

国境平駅跡地から、まずは白糸林道を歩く。17名の参加者と共に、森へと入っていく。あーワクワク。

  

しばらくは林道を歩く。林道は砂利が敷いてあるので、まあまあ歩けるのだが、登山道よりも堅いし小石でバランスを崩すので、長い道はきついのだ。どこまでこの状態が続くのだろう…?

今年はチョウセンゴミシの花が多い。豊作の合図だ。お酒、ジャム、健康食品…秋には何を仕込もうかな。

  

飯野さんがふと木を拾い杖代わりにした。あ、俺もほしいなあ…。人間は太古の昔、森から草原に出て行く際に、捕食者から身を守るために槍だの棍棒だのを手に持っていたに違いない。だから、森に入ると何か持ちたくなるのは当然の理由なのだろう。しかしじっちゃんが使っていたあの草本の、丈夫な軽い杖は、一体なんという植物だったのだろう?

そのうち、飯野さん達が謎の昆虫を持ってきた。セミの顔とハチのような胴体を持つ怪物?!

…なーんて、これはセミが脱皮の際に死んでしまったのだろう。こういうのたまに見ると一瞬ドキッとするよな。

そして、信濃路自然歩道に入っていく。この道がホントもう凄いこと凄いこと!

  

林床は身の丈程もあるオニシダが茂り、行く手を倒木が阻む。今にも何か出てきそうで気味が悪い。あるはずの橋は流されていて、ジャンプして渡ったりと、とても冒険的なコースだった!

宮川さん、こんなところ、よく一人で何度も下見したよなあ。あそうか、万座の原生林をうろついてエコツアーコースを探す私と一緒か。人間は、自分の好きなことに関しては、なんだってへっちゃらになれるってことなんだろうなあ。

  

フタリシズカ(センリョウ科チャラン属)は通常は花穂が2つなのだが、3つのものを発見。珍しいと思うんだけど?

困難続きの歩道も、白糸ハイランドウェイ付近から、整備が整ってくる。さすがは長野県側。群馬県側と違うなあ。

白糸の滝から流れる清流を渡って、前に進む。

  

道路手前にあったミズナラ巨木は幹周410cm。いいぞ、私の好きな大きな木がたくさん現れてきた。

歩道脇にある掘られた穴は何者の仕業なのか。ツキノワグマ?アナグマ?

トリガタハンショウヅル(キンポウゲ科センニンソウ属)だったかな?大島さんが教えてくれたけど忘れてしまった。

  

軽井沢側の信濃路自然歩道は、ハルニレの巨木がキーストーン種となった森林生態系が見られる。浅間山周辺の、軽石が厚く堆積している地域でよく見られる林相である。

ちょっと測ってみた大木は幹周370cm。しかしルートにはなんと幹周472cmの巨人もいた。この森がもし天明3年(1783年)浅間山大噴火で焼けてしまっているならば、ハルニレはわずか220年でこれだけ大きくなったということだ。

うーんでもどうだろう、この付近は森の匂いが王領地の森と似ているような気がする。きっと、天明の噴火の際は大丈夫だったのだろう。

  

無造作に引っかかっているクリの木の枝。葉が譲り葉になっているのは、葉が青々と茂っていた頃に折れてしまった証拠。離層が形成されなかったのだ。熊の仕業か?でも、あんなにクリはイガイガがあるのに熊は大丈夫なんだろうか?

竜返しの滝は、名前は聞いたことがあったが場所を知らなかった。そうか、ここにあったのか。

  

小瀬温泉付近まで来て、昼食をとる。私は今日は鳥丼にしたのだが、折角なので近くにあった山椒の葉をのせた。これで、味気ないコンビニ弁当が一気に料亭の味に?

ほほう、これが以前嬬恋村IP会のメーリングリストでアカバナと意見が分かれたクワガタソウ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)か。オオイヌノフグリと花の形状、雰囲気がよく似ている。

  

クワガタソウも、オオイヌノフグリと同じように、花の柄が長い。ピッキオが発行している【花のおもしろフィールド図鑑 春】によると、オオイヌノフグリは蜜をなめに来た昆虫がとまると柄が曲がり、昆虫は落ちないように雄しべや雌しべにしがみつき、それによって受粉が成功するのだという。クワガタソウにも昆虫が上ってきたので様子を見ていると、確かにそういう形態が見られた。上っても直ぐに落ちてしまうのに何度も上ろうと挑戦しているのだ。なるほど、面白いなあ。

そして「では、今日のお宝にご案内しましょう…」と宮川さんが仰り、一行は藪の中へと入っていく。

  

ここはかつての草軽電鉄廃線跡であるが、林道として利用されていない道なので、藪化が進んでいる。しかし廃線後、完全に手を入れなかったらこんなものではない。完全に森林化しているはず。だから何年かに一度に、行政サイドかナショナルトラストのような団体が下刈りをしているのだろう。そのような跡も確認した。

宮崎さんが【草軽のどかな日々 (RM LIBRARY(53))】の34ページを開いて、「ここです」と仰った。へえ、ここが柳川橋梁か。

これはいいものが残っていたなあ。道からそんなに遠くはないし、人も連れてこれる。うん、エコツアーに十分なるんじゃないかな。軽井沢の方、ぜひどんどん実施してほしい。

  

林道に戻る。最近はこういう山道を歩くと思わず森林セラピーロードの可能性を探ってしまう。竜返しの滝付近の信濃路自然歩道の天然林は素晴らしかったが、この付近は大きな木がない。そして線路を平坦にするために切り取りを行っているために見晴らしの悪いところも多い。この近代史遺跡群を絡めての森林セラピーロードは既存の道では難しいかも知れない。

そして、現在の林道とかつての廃線跡が分かれるところがあった。え、なぜ分かれるのだろう?

少し歩くと、宮川さんが秘密を教えてくれた。ここが二つ目のお宝、カーブしている橋梁である。カーブして橋に入るのではなく、橋梁自体がカーブしているのだ。全国の廃線後を調査研究してきた武井さんもこのような橋梁跡は見たことが無いとのこと。うーん、いい遺産があるではないか。この日記は動的ページなのだが、近いうちに静的ページに変えようと思っている。そうなった時、よりgoogle等の検索エンジンにヒットすることになり、このルートもクローズアップされることになるだろう。

そしてまた穴を発見。これは大きい。

  

いったい何者の仕業なのか。みんなで考えてみたが、よくわからなかった。見たところ、ジバチの巣を襲ったのではなく、蟻の巣を襲っているようだ。ツキノワグマは蟻の巣も狙うのだろうか?アナグマの可能性か?ああ、軽井沢ならアライグマ等の外来動物の可能性もある。

林道をぐるっと回りこんで先ほどのカーブのある橋梁を裏側から見る。

もうしばらく歩くと、長日向の駅があったと思われる地形にくる。橋梁の後は変化のない林道をずっと歩くことになるので退屈してしまう。エコツアーとしては、この辺で長日向の集落に降りて飽きさせないようにしたほうが良いだろう。長日向がどんな集落なのか見なかったので知らないが、山奥のひっそりとした集落でお茶でもいただければ最高だろなあ。

  

長日向駅跡付近と思われる場所で、コンクリートの構造物を発見。排水溝か何かだろうが、ちょっとよくわからなかった。

山口さんが何かを見つけた。白い陶器のようだ。見てみるとDAITO1924と書いてある。参加者の皆さんが「これは碍子だよ」と仰った。碍子?何だっけそれ?

インターネットで検索してみると、がいし(碍子、がい子)は、電線とその支持物である電柱・鉄塔などとのあいだを絶縁するために用いる器具(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)…とのこと。持って行こうかとも思ったが、私よりも研究家の武井さんが持っていたほうが何かと良いような気がするので潔く身を引いた。

線路を平行に保つため盛り土をしているところも結構あった。

  

美しい蛾はオオミズアオ(チョウ目ヤママユガ科)。学名はActias artemis、月の女神という意味だそうだ。神秘的な色だ。今日はこの我の死体が結構あったが、山口さんによるとカラスに襲われるらしい。

この交尾を観察していた方はラジオをガンガンにかけていた。あんなに大きな音でかけても蛾は逃げないんだな。つまり聴覚は太古に昆虫と分かれてから獲得した感覚器なのである。

たっぷり歩いた1日。12キロ以上あったと思う。久々にしっかりと森林ウォーキングをした。登山道と違って地面が固いので少々足がくたびれてしまったが、良い経験になった。このコースで一般向けのエコツアーコースを、近い将来ぜひ実現させたいものだ。





草軽電鉄廃線跡を歩く(その1)へ

草軽電鉄廃線跡を歩く(その3)へ

嬬恋村インタープリター会TOPへ