錦秋に輝いていた落葉広葉樹林−嬬恋の森。葉を落とした森の木々は、春の芽吹きの季節を迎えるまで何ヶ月もの間、雪と氷の季節・冬を乗り切らなくてはなりません。森の木々はどんな方法で、大切な芽を厳しい冬の寒さと乾燥から守っているのでしょう。 冬芽をよく観察してみると、鱗を一枚マントのように羽織っているもの、何枚も重ね着をしているもの。ねばねばしたものをまとっているものもあれば、細かい毛の生えた、まるで毛布のような葉をまとっているものなど、実にさまざまです。 今年も、あのベストセラー、「冬芽でわかる落葉樹」「葉でわかる樹木」の著者であり、冬芽観察の第一人者である馬場多久男氏の解説で嬬恋フィールドを歩き、冬芽の魅力にせまり、その検索方法を学びます。 |
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■ 馬場多久男の冬芽観察会 レポート by山口イワヨシ
「落葉した樹木の枝は、無表情な枯れ枝ではない。来るべき春に備えてみずみずしい生命の息吹を宿している。よく見ればその表情は実に豊かであり、その美しさには感動させられるものが多い。落葉樹の一本の枝をくわしく観察すると、そこから得られる情報だけで、樹木の名を知ることが出来るのである」(冬芽で分かる落葉樹) |
【事業報告】 今年も、冬芽観察の第一人者、馬場多久男先生をお招きし、研修会を開催することができた。冬のインタープリテーションでは、スノーシュー・冬山トレッキング共、冬芽のお話は欠かせない。同じ会場で同じテキストを用い同じ先生で、より深く冬芽の魅力を理解しようとこのイベントを行った。 この日は浅間山から寒風が雪をちらつかせながら吹き降りていた。とても寒かったのだが、先生は「私は手は温かいから大丈夫なんですよ」なんて仰り、ずっと素手でやってらっしゃった。後で触らせてもらうと、本当に温かかった。自然を愛する心で手が暖かいのだったら、私はナチュラリスト失格になってしまう。ところが先生は冬は強いのだが夏の熱さには弱く、バテテしまうそうだ。 高枝伐りばさみ、剪定ばさみでチョキチョキと冬芽の付いた枝を伐っていく。冬芽のお話だけではなく、選定の仕方を教えてもらったり、大変にぎやかな観察会となった。1時間半ほど観察会をした後、中に入ってスライドを使い用語の説明や、冬芽にはどんな種類があるのかなどの解説をしていただいた。寒いところから暖かく暗いところに入ったので、思わずウトウトしてしまう。スライドを送るボタンを何度か間違えて押してしまった!しかし初めての参加者は、葉痕と維管束痕が動物の顔に見える映像など、とても良い刺激になったようだ。それでも「その顔の写真集を出したらきっと売れますよ」というのは言いすぎかも!かなりのマニアしか購入しないと思います。 午後からはいよいよ「冬芽でわかる落葉樹」を使って冬芽検索をしたのだが、初めはずいぶん簡単に索引することができ、なんと楽な本なことか!と思いきや、冬芽や葉痕が小さくなってくるともう大変大変。使い込んでないと太刀打ちできなくなってしまう。しかし、この本は使いこなせば最強の冬芽図鑑。いつかマスターしなくては。 最後に、ご自分が取り組んできた伊那市の経ヶ岳自然植物の話をし、里山で見られたかつての植物を保護保全していきましょうと呼びかけていらっしゃった。 事務局長 木村道紘 |